昭和の中頃から生きてきました。
畳のにおい、夕暮れの湯気、ちゃぶ台を囲む声。
そのひとつひとつが、今でも耳の奥で響いています。
僕は料理人です。でも、ただの料理ではなく、声を聞く料理。
台所に立つたびに、あの日の笑い声が、叱られた言葉が、背中にぽんと触れるぬくもりが、ふいに思い出されるんです。
そんな風にして、ことばが芽吹く瞬間があるんです。
忘れてしまったと思っていた気配が、静かに心の奥から浮かんできて、
料理の香りと混ざりながら、ことばになる。
そしてそのことばたちは、誰かをそっと包むかもしれない。
泣きたい夜の背中をさするかもしれない。
それが、僕の目指す「ことばの宿」です。
この場所では、4つの扉をご用意しています。
まずひとつめは【ことほぐし】。
誰かに語りたいこと、誰にも言えなかったこと。
そんなことばが静かに綴られています。
深呼吸するように、読んでみてください。
ふたつめは【つくもつづり】。
100には足りない99のレシピ帳。
なぜ100じゃないのかって?
あなたが最後のひとさじをくれるその日まで、僕は待っているんです。
みっつめは【声のれん】。
昭和のれんの奥から聞こえてきた、あの人の声。
いまの時代に生きていたら、何を言うんだろう?
そんな空想も混ぜながら、声をつなぎます。
よっつめは【はしやすめ】。
真面目に生きてきた僕だからこそ、
肩の力をふっと抜くひとときも、大切にしたいんです。
笑ったり、こぼしたり、まぁいいかと笑える、そんな場所。
ことばの宿にようこそ。
ここは僕の“だな”と“だろ”が生きている場所。
読んだあなたのどこかに、静かに届くと信じています。